
高市首相「デフレ脱却まだ」発言で不動産の買い時はどう変わる?
作成日:2025/11/13 07:11 / 更新日:2025/11/13 07:11
高市早苗首相は参院予算委員会において、現在の物価上昇はデフレ脱却とは言えないとの認識を示しました。この発言は、今後の経済政策や金融政策の方向性を示唆するものであり、不動産市況にも大きな影響を及ぼす可能性があります。本記事では、この発言の真意を読み解き、不動産市況の今後の見通しと購入検討者が取るべき行動について詳細に解説します。
1. 高市首相の発言の背景と政府の経済認識
今回の発言を正しく理解するためには、その背景にある政府の経済認識を把握することが不可欠です。物価上昇という表面的な現象だけでなく、その質が問われている点が重要なポイントとなります。
1-1. 発言の要点と「デフレ脱却宣言」への慎重姿勢
高市首相は、足元の消費者物価上昇は食品価格などが主な要因であると指摘しました。これは、原材料費やエネルギー価格の高騰分が製品価格に転嫁される「コストプッシュ型」の物価上昇であるとの見方です。政府と日本銀行が目指しているのは、賃金の上昇を伴い、消費が活発化することで物価が上がる「デマンドプル型」の好循環です。この好循環が確認できない限り、本格的なデフレ脱却とは言えないという慎重な姿勢が示されています。
ロイター通信の報道によれば、首相は「政府がかじ取りを間違えばデフレに戻ってしまう可能性」に言及しました。このことから、現政権が性急な金融引き締め策に転じるリスクは低く、経済の安定を最優先する方針であることがうかがえます。
出展: ロイター「高市首相『デフレ脱却宣言まだ』、日銀の適切な金融政策運営に期待」(2025年11月12日)
1-2. 賃金上昇を伴う物価安定目標の重要性
政府がデフレへの逆戻りを警戒する背景には、実質賃金の伸び悩みという課題が存在します。物価上昇率が名目賃金の上昇率を上回る状況が続けば、家計の購買力は実質的に低下します。購買力が低下すると消費は停滞し、企業の収益も伸び悩み、さらなる賃上げの原資が失われるという悪循環に陥りかねません。
高市首相が日本銀行に対して「賃金上昇を伴った2%の物価安定目標」の実現を期待すると述べたのはこのためです。持続的な経済成長を実現するためには、金融政策と財政政策が一体となり、企業の賃上げを促す環境を整えることが最重要課題であるとの認識が示されています。この方針は、今後の金融政策の方向性を占う上で極めて重要なシグナルとなります。
2. 不動産市況への具体的な影響と今後の見通し
政府の慎重な経済認識は、金融政策を通じて不動産市況に直接的な影響を与えます。ここでは、住宅ローン金利と不動産価格の2つの側面に分けて、今後の見通しを分析します。
2-1. 金融緩和の継続と住宅ローン金利の動向
高市首相の発言は、日本銀行が大規模な金融緩和政策を当面維持する可能性が高いことを示唆します。デフレ脱却が道半ばである以上、経済を下支えするために低金利環境を維持する必要があるからです。金融緩和が継続されれば、住宅ローンの金利も歴史的な低水準で推移することが予想されます。
特に、短期プライムレートに連動する変動金利型の住宅ローンは、低い金利の恩恵を受けやすい状況が続くでしょう。一方で、長期金利の動向に左右される固定金利型(フラット35など)は、将来的な物価上昇期待や海外金利の影響を受けて緩やかに上昇する可能性も否定できません。しかし、急激な利上げ局面には至らないため、金利が大幅に跳ね上がるリスクは限定的と考えられます。
2-2. 不動産価格の高止まりと潜在的なリスク
低金利環境の継続は、不動産の購入需要を強力に下支えする要因となります。住宅ローンの返済負担が軽減されることで、購入検討者の購買意欲が刺激され、不動産市場の活況が続く可能性が高いです。特に、資材価格や人件費の高騰を背景に新築物件の価格が上昇しているため、中古物件市場にも需要が流れ込み、全体として不動産価格は高止まり、あるいは緩やかに上昇する展開が想定されます。
ただし、楽観はできません。首相が懸念したように、景気が後退しデフレに逆戻りする事態となれば、状況は一変します。企業の業績悪化や雇用の不安定化は、住宅購入マインドを冷え込ませる直接的な原因となります。そうなれば、不動産の需要は減退し、価格の下落圧力が高まるリスクも存在することを念頭に置く必要があります。
3. 不動産購入検討者が今取るべき行動指針
このような市況見通しの中で、不動産の購入を検討している人々は、どのような戦略で臨むべきでしょうか。ここでは、具体的な行動指針を3つのステップに分けて解説します。
3-1. 低金利環境を最大限に活用した資金計画
現在の低金利は、不動産購入において最大の追い風となる要素です。この機会を活かすためには、自身のライフプランに基づいた堅実な資金計画を立てることが何よりも重要になります。まずは、将来の金利上昇リスクをどこまで許容できるかを検討し、住宅ローンの金利タイプを選択すべきです。
金利変動リスクを完全に排除したいのであれば、全期間固定金利型が最適な選択肢となります。返済額が完済まで変わらないため、長期的な家計管理が容易になります。一方、少しでも返済額を抑えたい場合は変動金利型が魅力的ですが、将来の金利上昇に備えて繰り上げ返済用の資金を準備しておくなどの対策が不可欠です。
3-2. 資産価値が維持されやすい物件の選定基準
経済の不確実性が存在する中では、将来にわたって資産価値が落ちにくい物件を選ぶ視点が極めて重要です。価格の変動リスクを低減するため、目先の価格やデザインだけでなく、物件が持つ本質的な価値を見極める必要があります。
具体的には、「立地の優位性」が最も重要な選定基準となります。駅からの距離、商業施設の充実度、教育機関や医療機関へのアクセスなどを総合的に評価します。加えて、都市計画や再開発の動向も確認し、将来性のあるエリアを選ぶことが賢明です。また、建物の構造や管理状態、ハザードマップで示される災害リスクなども、長期的な資産価値を維持する上で欠かせないチェックポイントです。
3-3. 継続的な情報収集と冷静な判断力
不動産市況は、経済政策、金融政策、景気動向など様々な要因によって常に変動します。そのため、購入を決断するタイミングだけでなく、購入後も継続的に関連情報を収集し続ける姿勢が求められます。政府や日本銀行が発表する経済指標や政策変更に関する公式発表には、常に注意を払う必要があります。
また、メディアの報道や専門家の意見に一喜一憂することなく、複数の情報源を比較検討し、客観的なデータに基づいて冷静に判断することが重要です。自身のライフプランと資金計画を軸に据え、外部環境の変化に柔軟に対応できる準備をしておくことが、不動産購入で成功するための鍵となります。
4. 高市首相の発言に関するQ&A
Q1. この発言は、金融緩和が永久に続くことを意味しますか?
A1. いいえ、永久に続くことを保証するものではありません。発言は、賃金上昇を伴う持続的な物価上昇が実現するまでは、慎重な金融政策運営を続けるという政府の姿勢を示したものです。将来、経済状況が好転し、デフレからの完全な脱却が確実となれば、金融政策が正常化に向かう可能性は十分にあります。
Q2. 今後、不動産価格が大きく下落するリスクはありますか?
A2. ゼロではありません。首相が言及したように、景気が後退してデフレに逆戻りするような事態になれば、雇用不安や所得の減少から住宅需要が減退し、不動産価格が下落するリスクは存在します。そのため、購入を検討する際は、万が一の価格下落にも耐えうる資産価値の高い物件を選ぶことが重要です。
Q3. 購入するなら、新築と中古のどちらが良いでしょうか?
A3. 一概にどちらが良いとは言えません。新築物件は最新の設備や耐震基準を備えている魅力がありますが、資材価格高騰の影響で価格は高めに設定されています。一方、中古物件は比較的価格が安く、好立地の物件を見つけやすい利点がありますが、リフォーム費用や建物の状態を慎重に見極める必要があります。自身の予算やライフスタイルに合わせて総合的に判断することが大切です。
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