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資産価値に差が出る!東京と郊外の中古マンション価格、今後の見通しを徹底予測

資産価値に差が出る!東京と郊外の中古マンション価格、今後の見通しを徹底予測

資産形成

作成日:2025/10/09 07:10 / 更新日:2025/10/16 07:10

1. 首都圏中古マンション市場の現状:二極化する価格動向

首都圏の中古マンション市場において、価格動向の二極化が鮮明になっています。東京都区部では依然として価格上昇が続く一方で、周辺の3県では価格が弱含む傾向が見られます。この現象は、コロナ禍以降変化してきた人々のライフスタイルや経済状況、そして不動産に対する価値観の変容を映し出しており、今後の市場を占う上で重要な指標となります。本記事では、最新のデータを基にこの二極化の背景を分析し、今後の価格推移と購入検討者が留意すべき点を解説します。

1-1. 最新データに見る価格の明暗

株式会社東京カンテイが公表した2025年7月度の中古マンション価格データは、現在の市場動向を象徴的に示しています。首都圏全体としては、中古マンションの平均価格が5,857万円となり、前月比でプラス0.1%と微増ながら12ヵ月連続の上昇を記録しました。しかし、この数値を詳しく見ると、東京都の価格上昇が全体を牽引している構図が明らかになります。一方で、神奈川県、埼玉県、千葉県の周辺3県では価格が弱含んでおり、都心と郊外で価格動向に明確な差が生じていることが確認できます。

このデータは、首都圏という一つの大きなマーケットの中でも、エリアによって需要の質や強さが異なることを示唆しています。東京都、特に都心部への需要集中が価格を押し上げる一方で、周辺エリアでは購買層の慎重な姿勢が価格に反映され始めていると考えられます。

出展: 東京カンテイ 市場調査部 X(旧Twitter) 投稿
"本日、2025年7月度の中古マンション価格を公表。首都圏は東京都の事例シェア縮小や周辺3県での弱含みが影響し、前月比+0.1%の5,857万円と僅かながら12ヵ月連続のプラス。また、近畿圏は大阪エリアが牽引して2ヵ月連続の上昇、中部圏は8ヵ月ぶりのマイナスとなっています。"

1-2. コロナ禍以降の市場トレンドの変化

現在の価格二極化を理解するためには、コロナ禍以降の市場トレンドの変化を振り返る必要があります。感染症拡大初期には、リモートワークの急速な普及を背景に、働き方や住まいに対する価値観が大きく変化しました。都心への通勤頻度が減少したことで、人々は都心の利便性よりも、居住空間の広さや快適性を重視する傾向を強めました。その結果、比較的価格が安く、広い住戸を確保しやすい郊外エリアの人気が高まり、中古マンション価格も上昇する「郊外シフト」と呼ばれる現象が起きました。

しかし、経済社会活動が正常化するにつれて、このトレンドには揺り戻しが見られます。多くの企業でオフィスへの出社が再開、あるいは出社とリモートを組み合わせるハイブリッドワークが定着しました。これにより、再び都心へのアクセスの良さ、つまり通勤利便性が住まい選びの重要な要素として再評価されるようになりました。この「都心回帰」の動きが、現在の東京都と周辺3県における価格動向の差を生み出す大きな要因の一つとなっています。

2. 価格差が生まれる背景:東京都と周辺3県の違い

東京都と周辺3県で中古マンション価格の動向が分かれている背景には、それぞれのエリアが持つ市場特性の違いが存在します。東京都、特に都心部では「資産性」を重視する国内外の投資需要や富裕層の実需が価格を力強く下支えしています。対照的に、周辺3県では主にマイホームを求める「実需層」が市場の中心であり、住宅ローン金利や物価の動向が購買意欲に直接的な影響を与えやすくなっています。

2-1. 東京都の価格を支える「資産性」と「需要」

東京都のマンション価格が上昇を続ける背景には、複合的な要因が絡み合っています。まず挙げられるのが、その強固な「資産性」に対する信頼です。日本の首都であり、経済・文化の中心地である東京の不動産は、価値が下がりにくい安全資産と見なされています。特に歴史的な円安を背景に、海外の投資家にとっては日本の不動産が割安に映り、投資資金が積極的に流入している状況です。また、国内においても、インフレーションへの懸念から、現金を価値の目減りしにくい実物資産である不動産に換えておきたいと考える富裕層の動きが活発化しています。

さらに、都心部で進行中の大規模な再開発プロジェクトも、エリア全体の魅力を高め、将来的な資産価値上昇への期待感を醸成しています。これらの要因が、実需だけでなく投資・資産防衛目的の需要をも呼び込み、高い水準の価格を支えています。加えて、共働き世帯(パワーカップル)の増加に伴う職住近接ニーズの高まりや、単身世帯の増加も、交通利便性や生活利便性に優れた都心マンションへの底堅い需要を形成しています。

2-2. 周辺3県における「実需」と「金利」の影響

周辺3県の市場は、主に住宅ローンを利用してマイホームを購入する実需層によって構成されているという特徴があります。そのため、彼らの購買力に直接影響を与える金融政策、特に住宅ローン金利の動向に市場が左右されやすい構造です。日本銀行による金融政策の正常化が進む中で、長期金利は既に上昇傾向にあり、住宅ローンの固定金利も引き上げられています。変動金利については अभी大きな変動はないものの、将来的な金利上昇への警戒感が広がりつつあります。

この金利上昇懸念が、実需層の購買マインドを慎重にさせていると考えられます。月々の返済額が増加することへの不安から、高値圏にある物件の購入をためらったり、予算を見直したりする動きが出ている可能性があります。また、建築資材価格や人件費の高騰を背景とした新築マンション価格の上昇が中古市場にも波及していますが、一方で日用品などの物価高が家計を圧迫しており、高騰した不動産価格に実需層の所得が追いつかないという状況も生じています。これらの要因が複合的に作用し、周辺3県では価格が弱含む展開になっていると分析できます。

3. 今後の価格予測:東京都は高値維持、周辺県は調整局面か

今後の首都圏中古マンション市場は、東京都と周辺3県で異なる展開を辿る可能性が高いと予測されます。東京都では、堅調な需要に支えられて高値圏での推移が続く一方、周辺3県では金利動向や実需層の購買力の変化を受け、一部エリアで価格の調整局面に入る可能性が考えられます。ただし、市場は常に変動するため、金融政策や経済情勢の大きな変化には注意が必要です。

3-1. 東京都:底堅い需要が続き、高値圏で推移

東京都の中古マンション価格は、当面の間、高値圏で安定的に推移すると考えられます。前述の通り、国内外からの投資需要や富裕層による資産防衛目的の購入意欲は依然として旺盛です。都心部で進行する複数の大規模再開発は、街としての魅力をさらに高め、不動産価値を中長期的に支える要因となります。また、交通利便性や生活利便性を重視する都心回帰の流れも継続しており、実需の面でも需要は底堅い状況です。

ただし、今後のリスク要因として、日本銀行による金融引き締めが本格化するシナリオは注視すべきです。政策金利の引き上げによって住宅ローンの変動金利が明確な上昇トレンドに入った場合、これまで市場を牽引してきたパワーカップル層などの購買力にも影響が及ぶ可能性があります。その場合、価格の上昇ペースは鈍化し、横ばい、あるいは一部で緩やかな調整に転じることも想定されます。それでも、需要の根強さから、大幅な価格下落に繋がる可能性は低いと見られています。

3-2. 周辺3県:エリアによる価格のまだら模様化

周辺3県の中古マンション価格は、一律に下落するのではなく、エリアや物件の特性によって動向が分かれる「まだら模様」の展開が予測されます。金利上昇への警戒感や物価高による可処分所得の圧迫は、引き続き実需層の購買意欲に影響を与え、市場全体としては上値の重い状況が続く可能性があります。特に、都心へのアクセスに時間がかかるエリアや、駅から距離のある物件、築年数が経過した物件など、条件面で劣るものから価格調整の動きが顕在化しやすくなるでしょう。

一方で、周辺3県内でも、ターミナル駅へのアクセスが良好な沿線の主要駅周辺や、駅直結・駅近の利便性が高いマンションは、需要が根強く、価格が維持されやすいと考えられます。また、東京都心部との価格差がさらに拡大すれば、割安感を求めて再び郊外へ目を向ける層も現れる可能性があります。したがって、周辺3県の市場は、物件の持つポテンシャルや個別性によって価格動向が大きく異なり、購入検討者はよりシビアな物件選別眼が求められることになります。

4. 購入検討者が注意すべきポイント

中古マンション市場が二極化し、先行きに不透明感がある中で物件購入を検討する場合、市場全体の動向に一喜一憂するのではなく、個々の状況に即した冷静な判断が求められます。自身のライフプランに基づいた揺るぎない資金計画を立てること、そしてマクロな市場分析だけでなく、個別の物件が持つ価値を多角的に見極めるミクロな視点を持つことが、後悔のない住宅購入に繋がります。

4-1. 自身のライフプランと資金計画の重要性

不動産購入は、多くの人にとって人生で最も大きな買い物であり、その判断は長期的なライフプランと密接に関連します。将来の家族構成の変化やキャリアプラン、子供の教育計画などを考慮し、本当にその立地、その広さの住まいが必要なのかを慎重に検討することが第一歩です。市場が上昇局面だからと焦って購入したり、下落を期待して待ちすぎたりするのではなく、自身のライフイベントに合わせた最適なタイミングを見極めることが重要となります。

特に、住宅ローンを利用する場合は、将来の金利上昇リスクを織り込んだ資金計画が不可欠です。変動金利でローンを組む際には、金利が1%や2%上昇した場合の返済額を具体的にシミュレーションし、それでも家計が破綻しないかを確認する必要があります。また、購入時の諸費用や将来の修繕積立金の値上がり、固定資産税なども考慮に入れ、無理のない返済計画を立てることが、長期にわたる安心な暮らしの基盤となります。

4-2. 物件の「個別性」を見極める視点

市場全体の価格動向も重要ですが、最終的に資産価値を決定づけるのは、その物件が持つ「個別性」です。同じエリア、同じ築年数であっても、物件によってその価値は大きく異なります。物件を検討する際には、マクロなデータだけでなく、ミクロな視点でその物件のポテンシャルを評価することが極めて重要です。具体的には、最寄り駅からの距離や路線の利便性、周辺の商業施設や公共施設の充実度といった「立地条件」は最も基本的な評価軸となります。

さらに、マンションの資産価値を長期的に維持するためには「管理状況」の確認が欠かせません。管理組合が適切に機能しているか、長期修繕計画が策定され、修繕積立金が計画通りに徴収・蓄積されているかといった点は、将来の建物の健全性や資産価値に直結します。加えて、建物の耐震性能やハザードマップを確認し、自然災害に対するリスクを把握することも重要です。これらの個別的要因を総合的に評価し、将来にわたって価値が維持されやすい物件を選ぶことが、賢明な購入判断と言えます。

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