
首都圏マンション平均1.5億円超え!供給減は価格暴落の予兆か?
作成日:2025/11/20 18:11 / 更新日:2025/11/20 18:11
1. 首都圏マンション市場の最新動向:供給減と価格高騰の背景
2025年10月の首都圏新築マンション市場は、供給戸数の大幅な減少と、東京23区における平均価格の記録的な高騰という二つの特徴的な動きを見せました。この現象は、一見すると市場の縮小と過熱が同時に起きているように見えますが、その背景にはデベロッパーの供給戦略や物件構成の変化が大きく影響しています。本章では、不動産経済研究所が発表したデータを基に、最新の市場動向とその背景を詳細に分析し、現在の首都圏マンション市場で何が起きているのかを解き明かします。
1-1. 供給戸数28%減の真相:前年の反動と供給時期の調整
日本経済新聞が2025年11月20日に報じた不動産経済研究所の発表によると、10月の首都圏新築マンション発売戸数は前年同月比で28%減少し、1316戸に留まりました。この数字だけを見ると市場が冷え込んでいるかのような印象を受けますが、その内実を紐解くと、複数の要因が複合的に絡み合っていることが分かります。最も大きな要因は、前年同月に大規模な物件供給が存在したことによる統計上の反動です。特定の月に大型タワーマンションなどの供給が集中すると、翌年の同月は比較対象として供給戸数が少なく見える傾向があります。
さらに重要なのが、デベロッパーによる意図的な供給時期の調整です。不動産経済研究所の松田忠司上席主任研究員は、11月に大量の供給が見込まれているため、その反動で10月の供給戸数が減少したと分析しています。マンション開発は長期的なプロジェクトであり、デベロッパーは市況や競合物件の動向を鑑みながら、最も効果的なタイミングで販売を開始する戦略を立てます。10月は戦略的に供給を絞り、翌11月に大規模な販売キャンペーンを展開するための準備期間であったと捉えることができます。
この供給減の傾向は、首都圏全域で一様ではありませんでした。特に東京23区では前年同月比34%減の535戸と落ち込みが大きかった一方で、東京都下では25%増、埼玉県では37%増と供給を伸ばしたエリアも見られます。これは、都心部では用地取得の困難さや建築コストの高騰からプロジェクトが厳選される傾向にあるのに対し、郊外エリアでは比較的手頃な価格帯の物件供給が続いていることを示唆しています。一方で千葉県は77%減と大幅に落ち込んでおり、エリアごとに供給の波が大きく異なっている実態が浮き彫りになりました。
1-2. 東京23区の平均価格が1億5000万円超えとなった要因
供給戸数が減少する中で、価格面では驚くべき動きが見られました。首都圏全体の平均価格が前年同月比7%上昇の9895万円となる中、東京23区の平均価格は同18%も上昇し、1億5313万円に達しました。この水準は、超高額物件の供給が集中した2023年3月の2億1750万円に次ぐ、過去2番目の高さです。この価格高騰の直接的な原因は、供給戸数が少ない中で、3億円を超えるような希少性の高い高額物件の供給が重なったことにあります。
これは統計上の「平均の罠」とも言える現象であり、市場全体の物件が均一に値上がりしたわけではない点に注意が必要です。少数の富裕層や海外投資家をターゲットとした都心部のラグジュアリー物件が、全体の平均価格を大きく押し上げた構図となっています。近年、世界的な金融緩和や円安を背景に、海外からの資金が日本の不動産、特に東京の優良資産に流入する傾向が強まっています。こうした実需層とは異なるプレイヤーの存在が、都心部の価格形成に大きな影響を与えているのです。
また、そもそも新築マンションの価格を押し上げる構造的な要因も存在します。土地の仕入れ価格の上昇に加え、建設資材の価格高騰や建設業界における人手不足を背景とした人件費の上昇が続いています。これらのコストプッシュ圧力はデベロッパーの利益を圧迫するため、販売価格に転嫁せざるを得ない状況が続いており、新築マンションの価格が下落しにくい地合いを形成しています。つまり、10月の記録的な平均価格は、特殊な物件構成と構造的なコスト増が重なり合って生まれた結果と言えます。
1-3. 初月契約率63%が示す市場の変化と買い手の心理
価格が高騰する一方で、販売の勢いを示す指標には変化の兆しが見られます。10月の首都圏における初月契約率は63%となり、好不調の判断目安とされる70%を4ヶ月連続で下回りました。このデータは、市場参加者の心理状態を読み解く上で非常に重要です。契約率の低下は、販売される物件に対して購入希望者が以前ほどの勢いで飛びついていない状況を示しており、買い手側の慎重姿勢が強まっていることを物語っています。
不動産経済研究所の松田氏は、契約率低下の理由として「価格帯が高くなり、1次取得者層が購入を決断するまでの時間が長くなっている」と指摘しています。物件価格が上昇を続け、特に一般の会社員を中心とする初めて住宅を購入する層にとって、手が届きにくい水準になりつつあります。高額な買い物であるため、購入者は物件の価値や将来の資産性をより厳しく吟味するようになり、即決を避ける傾向が強まっていると考えられます。これは、これまで続いてきた売り手優位の市場から、買い手が主導権を取り戻す方向への転換点となる可能性を秘めています。
この契約率の低下は、今後の価格動向を占う上での先行指標となるかもしれません。デベロッパー側も、契約率が伸び悩む状況が続けば、強気な価格設定を見直す必要に迫られる可能性があります。11月に予定されている3000戸規模の大量供給が行われた際に、この契約率がどのように推移するかは、今後の市場の方向性を決定づける重要な試金石となるでしょう。買い手の購買力が価格上昇に追いつかなくなっている現状は、市場の持続可能性に対する警鐘と捉えることもできます。
2. 今後の不動産価格はどうなる?専門家の見解と市場予測
現在の首都圏マンション市場は、供給減と価格高騰、そして契約率の低下という複雑な様相を呈しています。このような状況下で、多くの購入検討者が「今後、不動産価格はどう推移するのか」という疑問を抱いていることでしょう。価格動向を予測するためには、価格を押し上げる要因と、逆に調整圧力となる要因の両面を冷静に分析する必要があります。本章では、コスト構造や需給バランス、金融政策といった多角的な視点から、今後の不動産価格の推移を予測します。
2-1. 価格を押し上げる要因:継続するコストプッシュと根強い需要
まず、今後の不動産価格が大きく下落しにくいと考えられる要因について考察します。最大の要因は、マンション開発にかかるコストが依然として高止まりしている点です。建築に不可欠な鉄筋やコンクリート、ガラスといった資材の価格は、世界的な需要増や円安による輸入コストの上昇を背景に高騰が続いています。また、建設業界では深刻な人手不足が常態化しており、作業員の賃金をはじめとする人件費も上昇傾向にあります。これらのコストはマンションの原価に直接反映されるため、デベロッパーが販売価格を引き下げる余地は極めて限定的です。
需要面においても、価格を支える力は依然として存在します。特に都心部の希少性が高い物件に対しては、国内の富裕層による資産防衛や相続対策を目的とした購入意欲が根強くあります。また、海外の投資家にとっては、円安が続いている現在の状況は日本の不動産を割安に購入できる好機と映ります。彼らにとって東京の不動産は、政治的な安定性や市場の透明性の高さから魅力的な投資対象であり、この資金流入が都心部の価格を下支えする一因となっています。
さらに、日銀による金融緩和政策が当面維持されるとの見方が強いことも、不動産市場にとっては追い風です。住宅ローン金利が歴史的な低水準で推移している間は、購入者の返済負担が軽減されるため、購買意欲が維持されやすくなります。これらのコスト構造、特定の層からの根強い需要、そして低金利環境という三つの要素が組み合わさることで、不動産価格には強い下方硬直性、つまり価格が下がりにくい性質が備わっていると言えます。
2-2. 価格調整の可能性:実需層の購買力低下と金利動向のリスク
一方で、価格上昇のペースが鈍化、あるいは調整局面に入る可能性を示唆する要因も無視できません。その筆頭が、10月の初月契約率63%という数字に象徴される、実需層の購買力低下です。物件価格の上昇スピードに、一般の会社員の所得の伸びが追いついていないのが実情です。多くの家庭にとって、現在のマンション価格は予算を大幅に超過しており、購入を断念したり、より時間をかけて検討したりするケースが増えています。この実需層の需要減退が顕著になれば、市場全体の勢いが失われ、価格の頭打ちにつながる可能性があります。
もう一つの大きなリスク要因は、将来的な金利の上昇です。現在は低金利が続いていますが、国内外の経済情勢や物価動向次第では、日銀が金融政策を修正し、金利が上昇局面に転じる可能性も否定できません。住宅ローン金利、特に多くの人が利用する変動金利が上昇すれば、月々の返済額が増加し、家計を圧迫します。これを警戒する人々が増えれば、住宅購入マインドは急速に冷え込み、不動産需要が大きく後退することも考えられます。購入検討者は、将来の金利上昇リスクを織り込んだ上で資金計画を立てる必要があり、この不確実性が購入をためらわせる一因にもなっています。
加えて、不動産経済研究所が11月に3000戸程度の大量供給を見込んでいる点も注目されます。これまで供給が絞られていた状況から一転して市場に多くの物件が出回った際に、現在の需要でそれらを消化しきれるかどうかは不透明です。もし供給が需要を上回る状況となれば、需給バランスが崩れ、一部の物件では価格交渉の余地が生まれたり、デベロッパーが価格設定を下方修正したりする動きが出てくることも想定されます。
2-3. エリアによる価格の二極化が進む可能性
今後の不動産価格の動向を考える上では、「首都圏」という大きな括りではなく、エリアごとの特性を踏まえた二極化の進行を視野に入れることが重要です。すべてのエリアで一様に価格が上昇、あるいは下落するのではなく、場所によって全く異なる値動きを示す可能性が高いと考えられます。
価格が引き続き堅調に推移、あるいは上昇を続けると予想されるのは、交通利便性が極めて高い都心部や、大規模な再開発計画が進行中のエリアです。これらの地域は、資産価値の維持・向上に対する期待が高く、前述した富裕層や海外投資家からの需要が集中しやすい特徴があります。また、共働きで高収入のパワーカップル層なども、職住近接の利便性を重視してこうしたエリアを志向するため、実需の面でも底堅い人気を誇ります。供給が限られている一方で需要が多いため、価格は高値を維持しやすいでしょう。
これに対し、価格の調整圧力がかかりやすいと考えられるのは、都心から離れた郊外のエリアや、最寄り駅から距離があるなど交通利便性に劣る地域です。これらのエリアの物件は、主に地元の実需層が購入者の中心となります。そのため、実需層の所得の伸び悩みや購買力低下の影響を直接的に受けやすく、高騰した価格水準が維持できなくなる可能性があります。金利が上昇した場合には、より価格帯の低い物件へと需要がシフトし、これらのエリアでは価格が下落に転じるシナリオも十分に考えられます。このように、資産性と利便性の高いエリアとそれ以外のエリアとで、価格の二極化がより鮮明になっていくと予測されます。
3. マンション購入検討者が今取るべき3つの行動
首都圏のマンション市場が供給減や価格高騰、契約率の低下といった複雑な様相を見せる中、購入を検討している方々は、どのような視点を持ち、いかに行動すべきでしょうか。平均価格といった表面的な数字に惑わされることなく、冷静な情報収集と分析に基づいた判断がこれまで以上に求められます。本章では、現在の不透明な市場環境において、マンション購入検討者が取るべき具体的な三つの行動を提案し、後悔のない住宅購入を実現するための指針を示します。
3-1. 平均価格に惑わされず、個別具体的な相場を把握する
まず最も重要な行動は、報道される平均価格の数字を鵜呑みにしないことです。日本経済新聞が報じた東京23区の平均価格1億5313万円という数値は、ごく一部の超高額物件によって大きく引き上げられた結果であり、市場全体の実態を正確に反映しているわけではありません。この数値を基準に「都内のマンションはもう買えない」と諦めてしまうのは早計です。自身が購入を希望するエリアや駅、間取り、築年数といった具体的な条件に合致する物件の相場を、地道に調査することが不可欠です。
相場を把握するための具体的な方法としては、まず不動産情報ポータルサイト(SUUMOやHOME'Sなど)を日常的に確認し、希望条件に近い新築・中古物件の売り出し価格を定点観測することが挙げられます。また、実際に取引が成立した価格を知ることも重要です。国土交通省が運営する「不動産取引価格情報検索」や、不動産流通機構が提供する「REINS Market Information」といったウェブサイトでは、過去の成約事例を匿名化された形で閲覧できます。これらの客観的なデータを参考にすることで、売り出し価格が適正かどうかを判断する目が養われます。
さらに、物件の広さに対する価格を評価するために、「坪単価」を計算する習慣をつけることを推奨します。物件価格を専有面積(坪)で割ることで、広さの異なる物件同士でも価格水準を公平に比較することが可能になります。こうした個別具体的な情報収集を通じて、平均値のノイズを取り除き、自分だけの「ものさし」を持つことが、賢い物件選びの第一歩となります。
3-2. 購入タイミングを多角的に検討し、焦らない姿勢を貫く
「マンションは今が買い時か」という問いに対して、唯一絶対の正解はありません。重要なのは、市場の動向と自分自身のライフプランという二つの軸を照らし合わせ、多角的に購入タイミングを検討することです。現在の市場は、初月契約率が低下していることからも分かるように、買い手が少しずつ冷静さを取り戻している局面です。このような時期に、価格高騰への焦りから拙速な判断を下すことは避けるべきです。
市場の動向を見極める上で注目すべきは、11月に見込まれている大量供給後の反応です。不動産経済研究所の予測通り3000戸規模の物件が市場に出た後、契約率が回復するのか、それともさらに低下するのかによって、今後の需給バランスの変化を読み取ることができます。もし市場が供給を消化しきれないようであれば、価格交渉の余地が広がるなど、買い手にとって有利な状況が訪れるかもしれません。少なくとも数ヶ月単位で市場のデータを注視し、焦らない姿勢を貫くことが重要です。
一方で、自身のライフプランも重要な判断基準です。結婚や出産、子供の進学といった家庭の事情は、住宅購入の必要性を左右する大きな要因となります。市場の価格調整を待っている間に、低金利の恩恵を受けられなくなったり、年齢が上がって住宅ローンの審査が厳しくなったりするリスクも存在します。市場のサイクルと個人のライフサイクルを天秤にかけ、自分たち家族にとって最適なタイミングはいつなのかを冷静に話し合い、判断することが求められます。
3-3. 将来の金利上昇も見据えた厳密な資金計画を立てる
最後の行動として、これまで以上に厳密な資金計画を立てることが極めて重要になります。物件価格が高水準で推移していることに加え、将来的な金利上昇のリスクも現実味を帯びてきている現在、無理のない返済計画こそが、長期にわたる安定した生活の礎となります。物件の価格だけでなく、登記費用や各種税金、ローン保証料、仲介手数料(中古の場合)といった諸費用も含めた総額で予算を考える必要があります。
住宅ローンを選択する際には、変動金利と固定金利の特性を深く理解し、自身のリスク許容度に合ったタイプを選ぶことが不可欠です。変動金利は当初の金利が低い魅力がありますが、将来金利が上昇した場合には返済額が増加するリスクを伴います。一方、全期間固定金利は金利変動のリスクを回避できますが、当初の金利は変動金利より高めに設定されています。どちらが一方的に優れているというわけではなく、自身の家計状況や将来の収入見通し、性格などを踏まえて慎重に選択すべきです。
健全な資金計画の目安として、年収に占める年間ローン返済額の割合である「返済負担率」を20~25%以内に収めることが推奨されています。金融機関によっては35%程度まで融資を受けられる場合もありますが、上限まで借り入れると将来の不測の事態に対応できなくなる可能性があります。将来の金利上昇を想定し、金利が1~2%上昇しても無理なく返済を続けられるかといったストレステストを行うことも有効です。必要であればファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、客観的な視点から資金計画を検証してもらうことも賢明な選択と言えるでしょう。
出展元: 日本経済新聞 2025年11月20日「首都圏マンション発売、10月28%減 23区平均価格は1億5000万円台」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC201AX0Q5A121C2000000/
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