1. 不動産登記への国籍記入義務化、政府が本格検討へ
政府は不動産登記に所有者の国籍を記入することを義務付ける検討を開始しました。この新方針は、特に都市部で続くマンション価格の高騰に対応する施策の一環です。現在は所有者の氏名や住所のみが登記されていますが、国籍情報は含まれていません。このため、外国人による不動産取得の実態を正確に把握することが困難でした。国籍記入の義務化により、不動産市場の透明性を高め、適切な市場環境を整備することを目指します。
1-1. 読売新聞が報じた政府の新方針
2025年11月21日の読売新聞は、政府が不動産登記への国籍記入義務化を検討していると報じました。この動きは、外国人による不動産取得の実態をより正確に把握し、市場の適正化を図ることを主な目的としています。国土交通省は既に登記情報に基づき、外国人の不動産取得に関する実態調査を進めており、その結果も近く公表される予定です。政府は関連法令の改正を視野に入れており、今後の不動産政策の大きな転換点となる可能性があります。
1-2. 現行の不動産登記制度とその課題
日本の現行の不動産登記法では、不動産の所有者情報として氏名または名称、そして住所の登記が義務付けられています。しかし、所有者の国籍を登記する規定はなく、任意での記載も認められていません。このため、登記情報だけでは不動産所有者が日本人か外国人かを判別することはできません。特に日本国内に住所を持つ外国人の場合、氏名が日本風であることもあり、その実態把握は一層困難な状況となっています。この制度上の制約が、正確なデータに基づいた不動産政策の立案を妨げる一因と指摘されてきました。
2. 検討の背景にある不動産市場の構造的課題
国籍記入義務化の検討背景には、都市部を中心とした不動産価格の著しい高騰があります。特に新築マンション価格は過去最高水準で推移しており、需給バランスの歪みが指摘されています。この価格高騰の一因として、国内外の投資家による旺盛な需要が挙げられます。中でも、外国人投資家による購入が需給を逼迫させているとの見方があり、その実態を解明する必要性が高まっていました。
2-1. 続くマンション価格の高騰と需給バランス
近年、首都圏をはじめとする都市部のマンション価格は、高騰を続けています。建築資材の価格上昇や人件費の高騰に加え、低金利政策を背景とした住宅ローン需要の増加が価格を押し上げてきました。さらに、円安を背景に海外の投資家にとって日本の不動産が割安と映り、投資目的での購入が増加したことも大きな要因です。こうした複数の要因が絡み合い、需要が供給を上回る状況が続き、市場価格が一般の購入者にとって手の届きにくい水準にまで上昇しているのが現状です。
2-2. 外国人による不動産取得の実態と影響
国土交通省が実施した調査では、一定のデータが明らかになっています。2025年1月から6月の期間において、東京都内の新築マンションのうち、外国に住所がある人が取得した割合は3.0%でした。しかし、この数字はあくまで海外在住者に限ったものであり、日本国内に居住する外国人の取得実態は含まれていません。そのため、外国人による不動産取得の全体像を捉えているとは言えず、実態はさらに大きい可能性があります。こうした不透明さが、価格形成への影響度を測る上での課題となっています。
2-3. 投機目的の短期転売と市場への影響
不動産価格の高騰は、投機的な資金を呼び込む要因ともなります。国土交通省の調査によると、住所が国内外かを問わず、取得から1年以内に新築マンションを売買した割合は8.5%に上りました。こうした短期転売は、実需に基づかない価格上昇を招き、市場の過熱感を助長する可能性があります。この問題に対応するため、不動産大手などで構成される不動産協会は、引き渡し前の転売を禁止する新たな指針を策定するなど、業界全体で市場の健全化に向けた取り組みを進めています。
2-4. 安全保障上の観点からの土地所有問題
不動産所有者の国籍把握は、経済的な側面だけでなく安全保障上の観点からも重要視されています。特に、自衛隊施設や原子力発電所、国境離島といった安全保障上重要な施設の周辺にある土地が、外国資本によって取得されることへの懸念が以前から指摘されてきました。これに対応するため、2022年には「重要土地利用規制法」が施行されました。所有者の国籍を登記情報として把握することは、この法律の実効性を高め、国の安全保障に関わる土地の利用状況を適切に監視する上でも不可欠な情報基盤となります。
3. 国籍記入義務化がもたらす変化と今後の展望
国籍記入の義務化が実現すれば、日本の不動産市場に多角的な変化をもたらすことが予想されます。法改正のプロセスを経て、収集されたデータは市場分析や政策立案に活用され、市場の透明性向上に寄与します。この制度変更は、不動産業界や国内外の投資家の行動にも影響を与え、より健全で安定した市場環境の形成を促進することが期待されます。
3-1. 法改正の具体的な方向性とプロセス
国籍記入を義務化するためには、不動産登記法の改正が必要となります。今後、政府内で法務省や国土交通省などの関係省庁が中心となり、具体的な法案の検討が進められる見込みです。法改正にあたっては、登記申請時の手続きや必要書類、既存の登記への適用方法など、実務的な詳細を詰める必要があります。その後、法案は国会に提出され、審議を経て成立を目指すことになります。このプロセスには一定の時間を要しますが、政府は総合経済対策に調査費用を盛り込むなど、継続的な取り組みを進める姿勢を示しています。
3-2. 取得データの活用と市場の透明性向上
国籍情報が登記されることで、国や自治体はこれまで把握できなかった詳細なデータを収集・分析できるようになります。例えば、どの国籍の投資家が、どのエリアの、どのような種類の不動産を、どの程度の規模で取得しているかといった動向を定量的に把握できます。これらのデータは、不動産市場の過熱を抑制するための税制改正や、特定のエリアにおける購入規制の検討など、根拠に基づいた的確な政策を立案するための重要な基礎情報となります。市場の透明性が高まることで、健全な価格形成が促される効果も期待されます。
3-3. 不動産業界と投資家への影響
不動産業界にとっては、登記手続きにおいて本人確認書類などで国籍を確認する作業が新たに発生し、実務的な負担が若干増加する可能性があります。しかし、長期的には市場の透明化と安定化が業界全体の利益につながると考えられます。一方、外国人投資家にとっては、手続きが一つ増えることになりますが、ルールが明確化されることで予測可能性が高まります。日本の不動産市場が公正で透明性の高い市場であるとの認識が広まれば、かえって優良な長期投資家を呼び込む要因となり、市場の質の向上に寄与する可能性もあります。
4. 制度導入に向けた論点と海外の事例
不動産登記への国籍記入義務化は、市場の透明性を高める一方で、いくつかの慎重な検討を要する論点もはらんでいます。個人情報の取り扱いや差別につながるリスクへの配慮は不可欠です。また、諸外国では既に外国人による不動産取得に関して様々な制度が導入されており、それらの事例を参考にしながら、日本の実情に合った制度設計を進めることが求められます。
4-1. 個人情報保護と差別への懸念
国籍は個人のプライバシーに関わるセンシティブな情報であり、その取り扱いには細心の注意が必要です。収集した国籍データをどのように管理し、誰がどの範囲で閲覧できるのかなど、厳格な情報管理体制を構築することが大前提となります。また、特定の国籍を持つ人々に対する不動産取引上の不当な差別や偏見を助長しないよう、制度の目的が市場の健全化にあることを明確にし、社会的な理解を得ていく必要があります。個人情報保護法との整合性を確保しつつ、濫用を防ぐための法的・技術的な仕組み作りが重要な課題です。
4-2. 海外における外国人不動産取得の規制
外国人による不動産取得に関する規制は、国によって様々です。例えば、カナダやオーストラリア、ニュージーランドなどでは、外国人購入者に対して追加の税金を課したり、購入できる物件の種類や地域に制限を設けたりしています。スイスのように、外国人の不動産取得を原則として許可制とし、非常に厳しく規制している国もあります。一方で、アメリカやイギリスのように比較的規制が緩やかな国も存在します。これらの各国の制度やその背景、導入後の効果などを比較検討することは、日本の制度設計において有益な示唆を与えるものと考えられます。
4-3. 総合経済対策と今後の調査の継続
政府は、2025年11月21日にも決定する総合経済対策の中に、不動産取得の実態調査を継続するための費用を盛り込む方針です。これは、国籍記入の義務化という制度改正だけでなく、継続的なデータ収集と市場監視を通じて、不動産市場の動向を注視していくという政府の強い意思の表れです。今後も定期的に調査結果を公表し、市場の透明性を確保することで、投機的な動きを牽制し、国民生活の安定に不可欠な住宅市場の健全性を維持していくことが目指されています。
*出典: 2025年11月21日 読売新聞 不動産登記で国籍記入を義務化へ、外国人のマンション取得で価格高騰…適正化へ国交省が実態把握
https://news.yahoo.co.jp/articles/13ab68174dbf4e7bdeeab1698cf8f81ff6166181






