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国交省データ「外国人の購入3%」は嘘?不動産高騰の真実

国交省データ「外国人の購入3%」は嘘?不動産高騰の真実

資産形成>知識・用語解説

作成日:2025/11/25 17:11 / 更新日:2025/11/25 17:11

1. 国土交通省の調査が投じた一石

近年の不動産価格高騰を背景に、その要因を巡る議論が活発化しています。特に、外国人による不動産購入が市場価格を押し上げているのではないかという見解は、多くの人々の関心事となってきました。そうした中、2024年6月25日に国土交通省が公表した調査結果が、この議論に新たな視点を提供し、大きな波紋を広げています。本記事では、この調査結果を基点として、対立する見解を整理し、外国人によるマンション取得が不動産価格に与える影響について、多角的な視点から深く考察していきます。

1-1. 調査の概要と目的

国土交通省が公表した調査は、「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引の調査結果」と題されています。この調査の主な目的は、近年のマンション市場における取引の実態を客観的なデータに基づいて把握することにあります。具体的には、法務省が保有する不動産登記情報と民間の価格データを活用し、2018年1月から2025年6月までに保存登記された新築マンション約55万戸を分析対象としています。調査の焦点は「短期売買」と「国外に住所がある者による取得」の2点に絞られました。調査対象地域は、首都圏、中京圏、近畿圏から成る三大都市圏、そして札幌市、仙台市、広島市、福岡市の地方四市が含まれています。

1-2. 明らかになった調査結果の要点

調査結果から明らかになった主要なポイントは、大きく分けて二つあります。一つ目は、購入から1年以内に行われる「短期売買」に関する動向です。報告によると、東京都心部や神奈川県、大阪府、兵庫県の一部で短期売買の割合が高い傾向が見られました。特に、東京23区の大規模マンション(1棟あたりの登記数が100件以上)においては、2024年上期に短期売買の割合が9.9%に達し、大幅な上昇を示したことが報告されています。これは、特定の物件に投機的な資金が集中している可能性を示唆するデータと言えるでしょう。

二つ目のポイントは、「国外に住所がある者による新築マンションの取得」状況です。こちらも東京都心部や大阪府、京都府の一部で取得割合が高く、増加傾向にあるとされました。しかしながら、都心6区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区)に限定して見ると、国外居住者が2億円以上の高額物件を活発に購入しているという顕著な傾向は特に見られない、と結論付けられています。この部分が、後の議論の大きな火種となりました。

2. 調査結果を巡る対立する見解

国土交通省の調査結果は、その解釈を巡ってインターネット上を中心に二つの対立する見解を生み出しました。一方は調査結果の数字を額面通りに受け止め、外国人の影響は限定的だと主張します。もう一方は、調査が市場の実態を正確に捉えきれていないと反論します。ここでは、それぞれの主張の根拠と論理を詳しく見ていきます。

2-1. 見解A:「外国人の影響は限定的」とする主張

国交省の公表を受けて、一部からは「不動産価格高騰の原因を外国人に求めるのは間違いだ」とする声が上がりました。この主張の根拠となっているのは、東京23区における国外居住者の取得割合が2024年上期で3.1%という数字です。この数値を基に、市場全体に与える影響はごくわずかであり、価格高騰の主因とは言えないと結論付けています。また、取得者の内訳についても、一般的にイメージされがちな中国本土からではなく、台湾からの取得が多かったという点も指摘されています。この見解は、これまで感情論で語られがちだった議論に対し、公的な統計データという「ファクト」を提示した形です。

2-2. 見解B:「調査は実態を反映していない」との反論

一方で、先の見解に対しては強力な反論がなされています。その核心は、国交省の調査対象が「国外に住所がある者」に限定されているという点への指摘です。この定義が外国人による不動産取得の全体像を捉える上で、致命的な「統計の穴」を生んでいると主張がありました。具体的に挙げられているのは、日本国内に法人を設立して不動産を購入するケースです。この手法を用いれば、登記上の所有者は日本の法人となり、国外居住者による取得とは見なされません。外国人投資家がこの手法を多用している実態があるため、調査結果は氷山の一角に過ぎないというわけです。

さらに、経営管理ビザなどを利用して日本国内に居住する外国人が不動産を購入する場合も、同様に調査の対象外となります。彼らは法的には国内居住者として扱われるため、統計上は日本人による購入と区別がつきません。これらの指摘は、国交省が公表した数字だけを見て結論を出すことの危うさを示しており、議論の前提そのものを問い直すものとなっています。

3. 不動産価格への影響を多角的に分析する

二つの対立する見解は、同じデータを見ながらも、その定義と限界をどう捉えるかによって全く異なる結論を導き出しています。では、私たちはこの状況をどう理解すれば良いのでしょうか。ここでは、国交省の調査が持つ意味と限界を再確認し、不動産価格に影響を与える他の要因も考慮しながら、より複合的な視点からこの問題を分析していきます。

3-1. 統計データ解釈の注意点と調査の限界

今回の議論から得られる最も重要な教訓は、統計データを解釈する際には、その調査対象の定義を正確に理解する必要があるということです。国交省の調査は、あくまで「国外に住所を持つ個人や法人が直接的に日本の新築マンションを取得したケース」を抽出したものです。このデータ自体は非常に貴重であり、国外からの直接投資の一端を可視化した点に大きな意義があります。しかし、この数値を「外国人による不動産取得のすべて」と見なしてしまうと、実態からかけ離れた結論に至る危険性があります。

前述の通り、日本法人を介した投資や、国内に居住する外国人による購入といった「見えにくい需要」は、この統計には含まれていません。したがって、この調査結果をもって「外国人の影響は3%程度しかない」と断定することはできません。このデータはパズルの一つのピースに過ぎず、全体像を把握するためには、他のピースと組み合わせる必要があるのです。

3-2. 法人取得など「見えない需要」のインパクト

では、統計に表れない「見えない需要」は、不動産市場にどの程度の影響を与えているのでしょうか。日本で法人を設立して不動産を購入する手法は、資産管理や税務上のメリットから、国内外の富裕層に広く用いられています。特に海外の投資家にとっては、法人を介することで取引の柔軟性が増し、将来的な売却や相続が容易になるという利点があります。こうした法人名義での購入が、特に都心部のタワーマンションや高額物件市場に集中している可能性は十分に考えられます。

これらの物件は、一般的な実需層がターゲットとする市場とはやや異なりますが、その価格動向は周辺の不動産相場にも影響を与えます。一部の需要層による旺盛な購買力が特定エリアの価格を牽引し、それが市場全体の価格水準を押し上げるという波及効果が起こり得るからです。たとえ全体の取引件数に占める割合が小さくとも、価格形成における影響力、すなわち「値決め」に関わるインパクトは決して無視できません。

3-3. 価格高騰の要因は複合的である

不動産価格の高騰を外国人投資家だけの問題として捉えるのは、事態を単純化しすぎています。現在の市場価格は、様々な要因が複雑に絡み合って形成されています。第一に、長年にわたる日本銀行の金融緩和政策が挙げられます。歴史的な低金利は住宅ローンを借りやすくし、国内の旺盛な実需と投資需要を下支えしてきました。第二に、建設業界における深刻な人手不足と、円安を背景とした建築資材価格の高騰です。これにより、新築マンションの供給コストそのものが上昇し、販売価格に転嫁されています。

加えて、国内の富裕層による相続税対策としての不動産購入や、都心回帰というライフスタイルの変化も、都心部のマンション需要を押し上げる要因となっています。外国人による需要は、これら複数の要因の一つとして位置づけられるべきです。どの要因がどれだけの影響を与えているかを正確に切り分けることは困難ですが、複数の上昇圧力が同時にかかっているのが現在の市場環境であると理解することが重要です。

4. 結論と今後の展望

これまで、国土交通省の調査結果を起点に、外国人によるマンション取得と不動産価格の関係について考察してきました。対立する意見や、統計には表れない実態、そして価格を動かす複合的な要因を踏まえ、私たちはどのような結論を導き出すべきでしょうか。最後に、本稿の結論と、今後の市場の透明性を高めるために求められることについて述べます。

4-1. 影響は軽微とは断定できず慎重な分析が必要

現時点で得られる情報から導き出される結論は、「国土交通省の調査データのみをもって、外国人による不動産取得の影響が軽微であると断定することはできない」というものです。調査は「国外居住者」による直接取得という一面を切り取ったに過ぎず、法人名義での取得や国内居住外国人による取得といった実態を反映していません。これらの「見えない需要」が、特に都心部の高額物件市場において価格を押し上げる一因となっている可能性は否定できません。

重要なのは、感情論や不確かな情報に流されることなく、データの限界を認識した上で冷静に議論することです。不動産価格の高騰は、低金利や建設コストの上昇といった国内要因も大きく影響する複合的な問題です。外国人による需要を過大評価することも、逆に過小評価することも、本質的な理解を妨げます。影響の有無や大小を断定するには、より包括的で精緻なデータに基づいた分析が不可欠です。

4-2. 求められる市場の透明性と今後の動向

今回の議論は、日本の不動産市場における所有者情報の透明性に課題があることを浮き彫りにしました。特に、法人名義で所有されている不動産について、その最終的な受益者が誰であるかを追跡することは現状では困難です。市場の実態をより正確に把握し、国民的なコンセンサスを形成するためには、こうした法人所有者の実態調査など、より踏み込んだ情報収集と公開が求められます。市場の透明性を高めることは、不当な価格つり上げや投機的な動きを抑制し、健全な市場形成に寄与するはずです。

なお、国土交通省の調査発表と同日には、不動産協会から竣工前の新築マンションの転売(いわゆる「青田売り転売」)に関する規制指針が示される動きもありました。このような業界の自主的な取り組みや、今後の政府による政策動向が、市場にどのような影響を与えていくのかを注意深く見守っていく必要があります。

引用: 国交省が「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引の調査結果を公表 ~三大都市圏及び地方四市の短期売買や国外居住者による取得状況~」を公表。
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo05_hh_000001_00237.html

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